うさぎ“雪之丞”に変化
架空の名題に現実の二代目
「雪之丞変化」のあの雪之丞に二代目が誕生した。襲名したのは、いままで“むらさき・うさぎ”(写真)と名のっていた二十七歳になる男性(女性?)である。
“流す涙がお芝居ならば・・・”の歌で一世をふうびした三上於菟吉作「雪之丞変化」の女形・中村雪之丞は、もちろん創作上の人物。
こんど、ひいき筋の水上勉氏のすすめや三上於菟吉の遺族の了解もあって、めでたく架空の人物に現実の二代目が生まれたわけ。
二代目になった“むらさき・うさぎ”は舞踊では花柳寛五郎という名取。雪之丞襲名が決まったとき、彼女・・・いや彼は、「皆様のおかげで・・・」とうれし泣きをしていた。そして、九月三十日から十月四日まで、東京・有楽町の芸術座で水上勉書き下ろしの芝居「心中天の橋立」を演じて襲名披露をすることになった。
水上勉氏などは、すでに台本の第一稿を書き上げたという張り切りようだし、共演を買って出た中村芳子、江原真二郎、南原宏治もみんな彼の熱心なごひいき筋だという。これも彼の女っぽさゆえか。